男性が極端に少ないこの世界では、精子は貴重な資源です。その3

男性が産まれる確率が5000分の1という、常識が根底から覆された極端な人口比の世界。
圧倒的に女性が多い社会では、男性は「国家規模で保護すべき資源」として扱われる存在となり、
その役割はもはや生存や経済活動ではなく、「人類の存続そのもの」を担うものへと変わっていた。

この世界では、妊娠を望む女性は必ず国が発行する「妊可バンド」（妊娠可能証明バンド）を常に身に着ける義務がある。
そのバンドは一目で妊娠希望者であることを示すシンボルであり、
限られた男性に対し、いつでも生殖活動を受け入れる準備ができているという意思表示でもある。
街の至る所で光る妊可バンドは、この世界における「希望」と「競争」を象徴する存在だった。

さらに、男性が生殖活動に専念しやすいよう国が整備した制度――「男性奉公メイド制度」。
これは妊可バンドを身に着けた女性の中から選ばれた者が、メイドとして男性と同居し、
身の回りの世話から性行為に至るまで、生活のあらゆる面で奉仕することを求められる仕組みである。
男性に尽くし、身も心も捧げることが彼女たちにとっての誇りであり、同時に妊娠という目標を果たす唯一の道でもあった。

「男性と共に暮らす」という、この世界ではほとんど叶わない貴重で幸福な生活。
しかしその関係は、妊娠が成立するまでという限られた期限付きのものだった。
妊娠が確認された瞬間、彼女たちは役割を終え、新たな候補者と入れ替わる――
その現実が、彼女たちの献身と欲望をより激しく掻き立てていく。

モノクロ作品153ページ
※前作「男性が極端に少ないこの世界では、精子は貴重な資源です。その2」の続編です。

※この物語はフィクションです。
作中に登場する人物・団体は実在のものとは関係ありません。